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不動産ゼミ

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 不動産鑑定士で創価大学法学部の教員の松田佳久です。今回から数回にわたって入会権について取り上げたいと思います。対象地を鑑定評価するにあたり、その対象地が入会権の設定された土地である場合も、地方ではあり得るものと思います。入会権は用益物権ですので、所有権などの物権と同様に排他性があり、第三者からの利用妨害を排除することができます。このように強い権利ですので、当然に不動産鑑定評価では入会権を勘案しないといけません。まずは、入会権とはどのような権利であるかについて見ていきます。

1.はじめに

 入会権の古典的形態については、どの物権法の教科書にも書いてあります。すなわち、明治以前の農村で、一または数個の地縁的共同体である村落たる「むら」の住民が一定の山林原野等を集団で支配し、それを、各自の農業生産や生活上の諸資料(肥料・まぐさ・薪炭など)を得るために共同で利用することが各地の慣習によって広く行われておりました[1]。

入会権は慣習上の物権ということになります。

その中でも、共有の性質を有する入会権については、民法263条で「各地方の慣習に従うほか、この節の規定を適用する」とあり、この節というのは、第3節の共有の規定です。共有の性質を有する入会権は、入会権の設定されている土地(地盤)は入会権者が所有しています(所有形態の中でも総有という所有形態です。総有は、財産の管理・処分権が共同体に属し、構成員は使用・収益のみを行える共同所有形態で、構成員は持分を持たず分割請求もできない所有形態をいいます)。

 もう一つには、共有の性質を有しない入会権です。これについても民法294条で「各地方の慣習に従うほか、この章の規定を準用する」と規定されています。この章とは、第6章の地役権の章をいいます。共有の性質を有しない入会権は、地役権と同様、それが設定されている土地(地盤)部分を入会権者が所有しているのではなく、第三者が有しており、入会権者はその土地に、あたかも入会権の設定を受けて、利用している形になっています。


[1] 淡路剛久ほか『民法Ⅱ物権』219-220頁(有斐閣、第5版、2022年)。

2.入会権の具体的な内容

 1に示した民法の条文にあるように、入会権の内容は各地方の慣習に基づいています。地方では、慣習に基づいて様々な内容の入会権があります。主なものを挙げますと以下のとおりです。

1にも挙げましたが、まず、薪炭・用材の確保のための入会権があります。これは、燃料となる薪や、建築・農業などに利用される木材を伐採し搬出するといった内容のものです。 
次に、採草入会権です。家畜の飼料や堆肥にするための草を刈り取るといった内容のものです。
落ち葉・腐葉土の採取のための入会権。これは、畑の肥料(堆肥)にするために落ち葉や土を掬い取るといった内容のものです。
放牧入会権。山林や原野に牛や馬などを放して草を食べさせるといった内容のものです。
漁労入会権。共同利用の対象となっている水域や漁場で、魚介類等の水産物を捕るといった内容のものです。
用水確保のための入会権。農業用水等を得るために、湖や池に溜まっている水を利用する内容のものです。

3.登記の不要性

 入会権は慣習法上の物権ですので、不動産登記法の適用を受けません。つまり、登記しなくても第三者に対抗できるのです(そもそも登記はできません)。登記記録に入会権が登記されることはありませんので、鑑定評価だけではなく、不動産取引においても見過ごされてしまいます。そして、あとで入会権者から権利を主張され、入会権を対抗されてしまうということが起こり得ます。

4.入会権の存否が問題となった判例および裁判例事案

 ここでは、入会権の存否が問題となった判例および裁判例を見ていきます。

(1)最高裁判所第二小法廷判決 平成27年6月12日LEX/DB25540653

 この事案は、電力会社であるYが山口県熊毛郡で原子力発電所を建設することを計画しており、問題の山林がこの建設計画予定地にあり、地元住民であるⅩが、本件土地は、地元の住民を入会団体とする入会権が存する土地であることを主張しその確認を求めるとともに、入会団体の構成員が有する使用収益権に基づく本件土地の現状変更行為の差止め、および入会権に基づくⅩの本件土地の使用収益行為に対する妨害禁止を求めたもので、第一審はいずれの要求も棄却したため、Ⅹは控訴しました。控訴審は、「原判決(第一審判決)は相当であるとして控訴を棄却。そのため、Xは、最高裁に上告しましたが、最高裁は、上告棄却および上告不受理の決定をしました。この事案では入会権の存在は認められませんでした。

(2)大阪地方裁判所 令和3年12月2日判決 判例地方自治503号79頁

 これは、本件土地を大阪市と共有する大阪府が、Yらが本件土地を権原なく占有している旨主張し、Yらに対し土地の明け渡しを求めた事案です。Yらを含む労働者らおよび支援者らが、本件敷地および本件建物を長年利用していたとしても、本件敷地および本件建物に対し、共有の性質を有しない入会権を有していたとは認められず、また、本件土地を起居の場所や生活の拠点としていることからすれば、社会通念上、本件土地の全体についてYらによる共同での事実的支配が成立しているというべきであり、このようなYらによる事実的支配によって、大阪府の、共有持分権に基づく本件土地の管理や支配が、本件土地の全体について排除されている状態にあるものと認められるところ、大阪府の本件土地の明渡請求が、権利の濫用にあたるものとはいえず、憲法等に反する違法なものであるとも言えない、と判断されました、この事案は、不法占拠者であるYらが本件土地の利用権原として入会権の主張をしてきた点に特徴があります。

 以上はいずれも入会権は認容されておりませんが、次回の入会権のコラムではもう少しいろんな事案を提示してみたいと思います。

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