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不動産ゼミ

通行地役権について その4・完

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 不動産鑑定士で創価大学法学部の教員の松田佳久です。今回は「通行地役権について」その4ですが、その3では地役権の種類・内容と態様、地役権の取得(設定行為、時効取得など)についてみてきました。今回もその続きではありますが、通行地役権(地役権)については今回が最後です。

1.地役権の存続期間

 地役権の存続期間については、民法に規定はありません。設定行為(設定契約)で自由に定めることができます。通説は、「永久」と定めても特に問題はないとしています(ちなみに地上権も、最長期・最短期とも民法上に制限はありません(民法268条・同法278条)。永久の地上権も判例は認めています(大審院明治36年11月16日判決・大審院民事判決録9輯1244頁、大審院大正14年4月14日判決・法律新聞2413号17頁))。地役権は、承役地と要役地所有者との土地利用における利用調節のために機能するものですので、永久の存続期間であっても、承役地所有者の負担は軽微だと考えられているからです。ただし、存続期間を定めてもそれを登記しないと第三者に対抗できません。

2.地役権の消滅原因

 地役権の消滅時効については以下の特則があります。

(1)第三者による承役地所有権の時効取得

 第三者が、通行地役権等の地役権を排斥するような形で占有すると、それが取得時効の要件(民法163条「所有権以外の財産権を、自己のためにする意思をもって、平穏に、かつ、公然と行使する者は、前条の区別に従い20年又は10年を経過した後、その権利を取得する」、前条は次のとおりです。民法162条「20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。2 10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する」)を満たしますと、地役権は消滅します(民法289条)。しかし、第三者の取得時効の完成前に地役権の行使(要役所有者が通行地役権を行使したなど)がありますと、第三者の占有は地役権を排除しない形での時効取得となり、地役権は存続することになります。つまり、第三者は、地役権の負担付きの土地所有権を時効取得することになります(民法290条)。

(2)地役権の消滅時効

 地役権の消滅時効(民法166条 2 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅する)の起算点は、不継続地役権(間断のある地役権、通路を設けない通行地役権など)では、最後の権利行使時になり、継続地役権(地役権の行使が常に継続している地役権、通路を開設する通行地役権、観望地役権など)ではその行使を妨げるべき事実の生じた時となります(民法291条)。したがって、時効には遡及効がありますので、消滅時効にあってはその起算点に遡って、地役権はなかったものとなります。

(3)地役権の部分不行使

 通行地役権で予定されていた幅員を下回る通路しか開設しなかった場合等、地役権の不行使が部分的であった場合には、その不行使部分の地役権が時効消滅します(民法293条)。

3.地役権の効力

 地役権の効力としますと、承役地利用権、対抗力、地役権の対価、承役地所有者の義務などが挙げられます。

(1)承役地利用権

 要役地所有者等の地役権者は、その地役権を契約(設定契約)によって設定を受けた場合、その設定契約の内容に従って承役地を利用できます。また、時効で取得した場合は、時効取得の権利行使の態様によって定める内容に基づき承役地を利用できます(通路を開設して通行する形の地役権を時効取得した場合は、そのように承役地を通行利用できます)。

 しかし、地役権の目的は、土地利用の調節にあります。地役権者の必要の範囲内で、かつ承役地の利用の制限を最も少なくするような形で承役地を利用することになります(民法211条参照)。

 ただし、地役権を妨害する者がいる場合には、地役権も物権ですので、その排除ができます。承役地が自動車の通行を目的として設定された場合、通行地役権者は、通行の目的の限度でその通路全体を自由に使用する権利を有しますので、承役地の一部に車両を恒常的に駐車させている者に対してその禁止を求めることができます(最高裁判所平成17年3月29日判決・判例時報1895号56頁)。

(2)対抗力

 通行地役権は登記をすることにより第三者に対抗できます(民法177条)。しかし、不動産登記法の規定の不十分さや登記関連手数料の負担などから登記をしていない地役権が多く存在しています。平成10年の最高裁は、通行地役権について、通路としての使用が客観的に明らかであるため、そのことを認識し得たはずの承役地譲受人に対しては、通行地役権者は登記なくしてその地役権を対抗でき、地役権設定登記手続きも請求できると判断しています(最高裁平成10年2月13日最高裁民事判例集52巻1号65頁、最高裁平成10年12月18日最高裁判所民事判例集52巻9号1975頁)。

(3)地役権の対価

 土地賃借権とは異なり、賃料等の対価の支払いは要件ではありません(民法280条参照)。しかし、特約があれば対価の設定は可能であり、債権的効力になってしまいます(対価を登記する方法はありません)が、当事者を拘束します。したがって、承役地の譲受人は、地役権者に対して登記なくして対価の支払いを請求できます。

(4)承役地所有者の義務

 承役地の所有者は地上権の設定者と同様に地役権の行使を認容する義務を負うことになります。また、一定の行為をしない不作為の地役権の場合(たとえば、一定の高さ以上の建物を建ってはならないとした観望地役権など)は、このような不作為の義務を負うことになります。これに対し、特約によって、地役権者のために工作物設置等の積極的義務を負うとすることもできます。この義務は登記できますので、承役地の特定承継人(承役地購入者)を拘束します(民法286条、不動産登記法80条1項3号)。ただし、承役地所有者は、いつでも、地役権に必要な土地の部分の所有権を放棄して地役権者に移転し、上記の負担を免れることができます(民法287条)。

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