建築積算と建物鑑定 その1
不動産鑑定士で創価大学法学部の教員の松田佳久です。実は、2025年3月に建築積算士に合格しました。一級建築士を持っていたために2次試験から受験しました。受験した理由は、建築積算の知識が不動産鑑定士の建物鑑定に使えるのでは […]
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不動産鑑定士で創価大学法学部の教員の松田佳久です。今回は「通行地役権について」その3ですが、その2では地役権とはどのような用益物権であるかを見ていきましたが、今回はその続きです。
その2で実際に設定されている地役権を列挙しましたが、地役権の目的であります便益の種類には制限はありません。要役地(他人の土地を利用して利便性を高めようとする土地)と承役地(地役権が設定され、便益を与えるために利用・制限される他人の土地)が隣接している必要はありません。電力会社が高圧送電線の通る土地を承役地として地役権の設定を受けていますが、要役地と承役地が隣接していない場合が多いです。
なお、民法280条では、但書のカッコ書きで、民法の相隣関係(隣り合う土地の所有者同士が、通行、排水、境界などの利用を円滑にするために、強制的に互いの権利を制限・調整する民法上の規制)の規定の中で、公の秩序に関するものの規定に違反しないこととあります。たとえば、相隣関係の公の秩序に関する規定であります袋地所有者の隣地通行権(民法210条以下)を否定するような内容の地役権は無効です。
地役権は権利行使の態様から、次のように分類されています。なお、②の継続地役権、かつ、③表現地役権は、他の要件とともに地役権の時効取得の要件になっています(民法283条)。
①作為の地役権と不作為の地役権:通行地役権など、地役権者の一定の行為を目的とする作為の地役権と観望地役権や眺望地役権のように、承役地利用者の一定の不作為義務を目的とする不作為の地役権
②継続地役権と不継続地役権:通路を開設する通行地役権などを継続地役権といいます。開設された通路は継続的に存在し、利用されるからです。観望地役権もその態様になります。一方、通路を設けない通行地役権は、継続していないものとみなされ、不継続地役権となります。
③表現地役権と不表現地役権:通行地役権や地上に送水管を敷設する引水地役権などは、表現地役権です。これに対し、地下に送水管を通した引水地役権は不表現地役権となります。不作為の地役権もこの不表現地役権の態様になります。
原則は、要役地所有者と承役地所有者との間で締結された地役権設定契約による地役権の設定です。
しかし、設定の数の多い通行地役権などは、口頭で設定される場合が多く、契約書が残されていないことも多々あります。しかも、口頭での設定から何十年も経過してしまい、設定の経緯が不明である場合も多いです。そのような場合は、地役権の設定の存否が訴訟で争われる場合も多くなっています。
前述(1(2)態様)したように、民法283条では地役権の時効取得の要件が条文化されています。
継続的、かつ、表現の状態を満たし、さらに、所有権以外の時効取得の規定であります民法163条の要件、すなわち、「自己のためにする意思をもって、平穏に、かつ、公然と行使する者は、前条(民法162条)の区別に従い20年または10年を経過」する必要があります。10年の権利行使で時効取得できるためには、善意(自己に地役権がないことを知らない)かつ無過失(善意であること(自己に地役権のないことを知らないこと)に不注意がない)であることが必要です(民法162条2項を準用)。
通行地役権の場合、単に隣家の庭先を長年通行させてもらったというだけでは、継続の要件を満たしません。少なくとも通路の開設が必要です。そして、最高裁判決は、その通路の開設が、要役地所有者によってなされることも要求しています(最高裁判所昭和30年12月26日判決・最高裁判所民事判例集9巻14号2097頁、最高裁判所
昭和33年2月14日判決・最高裁判所民事判例集12巻2号268頁)。なお、この点につきましては、前掲最高裁判所昭和33年2月14日判決の裁判官の補足意見で、要役地所有者が承役地所有者等の開設した通路を継続して使用し、その維持・管理等の負担にあたってきたような場合には、通行地役権の時効取得を認めてよいとしています。
黙示の意思表示または慣習による地役権の取得を下級裁判所では認めているところもあります(私道の通行地役権、蔭打地役権(耕地に接続する山林の樹木が繁茂する場合は、耕地に対する日照時間が不足し、作物に害を与えるため、耕作に害を与える範囲内に蔭打に生立する樹木を伐採できるとする地役権)等)。
要役地の所有者が取得した地役権を要役地の地上権者・永小作人・賃借人等は行使できます。
これらの者が地役権を取得できるかについては、民法280条の条文に「自己の土地の便益に供する権利」という要件があり、大審院昭和2年4月22日判決・大審院民事判例禄6巻198頁は、土地の賃借人について、地役権の取得を否定しています。
ただし、近時は、最高裁判所昭和36年3月24日判決・最高裁判所民事判例集15巻3号542頁が、対抗力を有する農地賃借人に民法213条の隣地通行権を認めていることを根拠として、肯定する学説が多くなっています。
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