共有物の利用の円滑化に関する民法改正について(令和5年改正民法その1)
創価大学法学部で専任教員として民法を担当しています不動産鑑定士の松田です。今回は、所有者不明土地等について見ていきます。 担保評価等の不動産鑑定評価を行うにあたり、共有土地であるけれども共有者の一人が行方不明であると […]
Column
鑑定や評価業務の現場で得られた知見、専門家の視点、実務に役立つヒントなどを、コラム形式でわかりやすくお届けします。
不動産鑑定士で創価大学法学部の教員の松田佳久です。今回は前回まで続いている借地借家法の保護を受ける土地賃借権、すなわち、借地権であることの判断と借地権の価値は借り得によって生み出されているか、の完成版です。
前回は、裁判例では差額が発生していない事案もありましたが、「借り得」のある事案では、裁判官は「借り得」を基に借地権価格を算出する手法である賃料差額還元法の適用を認めており、差額(借り得)の90%以上の資本還元を認めている、との結論を得ることができました。
この「借り得」の話題を展開するにあたり、私の属する大学で使っている判例検索データベース(LX/DB)をくまなく検索して、分析しました。その結果を示すとともに副次的な情報も得ることができました(借家権価格の根拠となっている借家人の「借り得」、差額配分法適用における新規地代を算出する場合の期待利回りの値)。その情報も示していきたいと思います。
借地権の「借り得」を承認している裁判例は以下のとおりです。
東京地決定昭43・9・9LEX/DB27480119(借地権の第三者への譲渡許可申立事案)
鑑定委員会は、借地権割合80%、そこから13%の地主に支払う承諾料(名義書換料)を控除するとの意見を提示したのに対し、裁判官は次のとおり判断しました。すなわち、本件借地は地代家賃統制令の適用を受けるゆえ、一般には地代の低額なまたは地代以外の権利金その他の金銭の授受を禁止されている借地である。第三者に対する借地権の譲渡価格は高くなるとも考えられるが、これは賃貸人の意思と係わりなく形成される価格であり、このような場合に、地価の上昇にも拘らず、地代の改訂がこれに伴わないため生じた差額地代(借り得分)は、借地権価格となって賃借人に帰属すべきであるという考えによって、その価格を全額賃貸人に負担させるのは不合理である。よって、本件土地賃借権を賃貸人に譲渡する価格は、第三者に譲渡する場合の価格である一般的借地権価格から相当減額するのが相当である、との判断です。
東京地決昭46・2・19LEX/DB 27480477
土地賃貸人が自ら建物および借地権の譲渡を受ける場合の対価につき、借り得を認めています。すなわち、借地権価格を更地価格の70%とするのは、近隣における借地権の一般的交換価格であるが、このような高額な借地権価格が形成された主たる要因は、土地の価格が社会経済的要因により著しく高騰したのにかかわらず、地代がそれに伴って上昇せず、そのために、借地権の譲受人の経済的利益(借り得)が増大したことによる、としています。
ところで、借地権を地主が買い戻す価額としては、名義書換料を借地権価額から控除したものとなります(東京地決昭46・2・19LEX/DB 27480477)が、東京での名義書換料は借地権価格の10ないし15%(東京地決昭46・2・19LEX/DB 27480477、東京地決昭46・11・12LEX/DB、東京地決昭46・2・19LEX/DB 27480477 )とされています。
東京地判昭54・6・25訟務月報25巻11号2867頁(相続税課税処分取消請求事件)
これは、借地人が前提としているように相当な地代と実際に支払う地代との差額(借り得の額)を資本還元したものが借地権価額であるとするならば、使用貸借の場合にもその価額を認めるべきであるのに、税務上は使用借権価額を零としていることからみても、借地権価額の要素となるのは、借り得の有無ではなく、その法的保護の内容というべきである、としています。
これまでの裁判例の調査からすれば、借り得を否定する裁判例はありましたが、裁判官は借り得を認めているといえます。
裁判官に借り得が借地権価格を形成するということを認めさせたのは、収集した裁判例の判決文を見る限り、鑑定委員会の意見や裁判所鑑定等における不動産鑑定基準に則った鑑定評価手法の提示結果であって、裁判官がそれを信頼したからだということになりそうです。
これまでの不動産鑑定士の先生方が、裁判官に対し、借り得が借地権価格を形成することを教えてきたといえると思います。
ただし、いまだそれを認めない裁判官も少数いるということは事実です。
裁判官が借家人の借り得を認めている裁判例には、
がありました。たとえば、東京地決昭48・2・8は、鑑定委員会の意見が、名義書換料を算出するにつき、
地域の一般的な借地権割合×(1-借家権割合)×名義書換料割合
とするが、裁判官は借家人の借り得が発生していても、名義書換料算定に当たりそれを控除して、地主の経済的利益を軽減すべきではないとし、借家人の「借り得」を認めています。
令和4年以降の裁判例ですが、差額配分法適用における新規地代を算出する期待利回りにつき、以下の判断をしています。参考になればと思います。
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