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不動産ゼミ

借地借家法の保護を受ける土地賃借権(借地権)と借り得について その1

不動産ゼミ

 不動産鑑定士で創価大学法学部の教員の松田佳久です。今回は借地借家法の保護を受ける土地賃借権、すなわち、借地権であることの判断と借地権の価値は借り得によって生み出されているかについて見ていきます。

借地権であるかの判断

 評価対象が、土地の賃借権である場合、借地借家法の保護を受ける賃借権であるかどうか、つまり借地権であるかどうかを、まず判断しなければなりません。判断の結果、借地権であるということになれば、評価対象の土地賃借権については、更地価格の何割以上にもなる経済的価値を有するものとして評価することになります。

 借地権であるかどうかの判断手順を借地借家法2条1号の条文の文言をヒントに見ていきましょう。
 条文には、借地権とは、「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう」とあります。ということは、借地権と判断され、それなりの価値を評価するためには、まず、「建物所有目的」と判断されることが必要です。そのためには、借地上に建っている工作物が「建物」だと判断される必要あります。次に、借地の用途が「建物所有目的」であると判断される必要あります。

さらに、借地借家法15条では、「一時使用目的の借地権」として、「第二十五条第三条から第八条まで、第十三条、第十七条、第十八条及び第二十二条から前条までの規定は、臨時設備の設置その他一時使用のために借地権を設定したことが明らかな場合には、適用しない」とあります。ということは、借地借家法の保護を受ける土地の賃借権は建物所有目的であったとしても、一時使用目的であってはならないということになります。

さらに、賃貸借の当事者間では、借地権の対抗力は何ら意味を持ちませんが、第三者との関係で借地権を考えないといけない場合(借地権の購入者は購入した借地権を第三者に対抗できなければなりません。対抗できない借地権を購入しても、第三者によってその借地権が簡単に否定されてしまうのであれば、購入する意味がありません)で、借地権の対抗力を以下の借地借家法10条1項の規定に基づいて取得している場合は、借地権の対抗力の及ぶ範囲内にその借地権があるかどうかを確認しないといけません。

借地借家法10条(借地権の対抗力)「借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる」それでは、上記の判断項目を一つ一つ見ていきます。

「建物」所有における「建物」の意義

 「建物」とは、「工作物」(民法265条)の概念より広く、ある程度の永続性を有し、住居、事務所、店舗、物の貯蔵その他の用途に供され、屋蓋(おくがい)、周壁等その用途に相応した構造を有し、原則として独立して登記され得る物を意味し、区分所有権の目的となる建物の一部分も含まれます。

 結局は、個別具体的に事例ごとに、社会通念や借地借家法の立法趣旨などに照らして決定することになります。

 建物性が肯定された裁判例としては、東京高判昭和43年4月26日東高民報19巻4号92頁(まわりに太い柱を有する三階建の鶏舎、犬舎)、東京地判昭和36年12月4日下民12巻12号1905頁(半永久的性質をもつ広告塔)などがあり、否定されたものとしては、東京地判昭和43年10月23日判時552号59頁(地面に丸太を立てトタンで蔽った掘立式の車庫)があります。

 以上からするに、なからずしも人が居住したり作業をしたりといった人が関与しないもの(鶏舎、犬舎、広告塔)であっても、建物として捉えられるということが言えると思います。また、建物登記によって対抗力を得ることから登記ができるものでないといけないということになります。

「建物所有目的」性の判断

 「建物所有目的」であると判断されるには、借地の主たる目的が建物所有にあることが必要です。それは、結局は借地契約の解釈の問題であり、契約書の文言、使用状況などの諸般の事情を考慮して判断されます。

「建物所有目的」ありと判断された判例・裁判例としては、東京地判平成28年1月14日LEX/DB25533526(幼稚園運動場使用目的としての昭和24年契約について、同契約継続中に昭和24年賃借地を昭和8年契約に含めて建物所有を目的とすることが黙示に合意された)、東京地判平成4年3月31日判時1487号67頁(ガソリンスタンド(店舗・事務所、ポンプ室、地下貯蔵槽等))、最判昭和58年9月9日判時1092号59頁(自動車学校建築のため木造家屋の敷地に使用する目的でなされた土地の賃貸借)などがあります。

 「建物所有目的」なしと判断されたものとして、国税不服審判所・裁決平成12年6月27日裁決事例集59号332頁(本件敷地を含む本件土地を昭和53年ころから本件相続開始日まで引き続いてバッティングセンター経営の事業用地として利用し、本件待合フロアー及び本件店舗はバッティングセンターと構造上一体となっており、本件倉庫も含めて本件構築物はいずれもバッティングセンターの経営に必要な付属建築物として建築されたものと認められるから、本件土地の賃貸借の主たる目的は、バッティングセンターとして使用することにあるといえる。そうすると、Aが本件建築物を建築所有していたとしても、それは本件土地をバッティングセンターとして使用するための従たる目的にすぎないというべきであるから、本件土地の賃貸借は、借地借家法第2条第1号に規定する建物の所有を目的とする賃借権に該当しない)、最判平成7年6月29日裁時1150号7頁(本件土地賃貸借は賃借人の経営する幼稚園の運動場として使用され、幼稚園経営の観点からすれば隣接の園舎敷地と不可分一体の関係にあるということができるが、園舎の所有それ自体のために使用されているものとはいえず、また賃貸人においてそのような使用を了承して賃貸していると認めるに足りる事情もうかがわれないとして土地の賃貸借は建物所有ではない)、東京地判昭和54年11月28日判タ416号161頁、東京地判平成7年7月26日判タ912号184頁(中古車展示場:事務所用建物の所有は従たる目的にすぎない)などがあります。

 これらの総括としては、建物所有が主なのか従なのかで判断が異なるということが言えると思います。

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