三友システムアプレイザルのロゴマーク
English

Column

コラム

鑑定や評価業務の現場で得られた知見、専門家の視点、実務に役立つヒントなどを、コラム形式でわかりやすくお届けします。

不動産ゼミ

「タワマン節税」と不動産鑑定

不動産ゼミ

  不動産鑑定士で創価大学法学部の教員の松田佳久です。今回は「タワマン節税」を否定した有名な最高裁裁判所令和4年4月19日判決(最高裁判所民事判例集76巻4号411頁搭載)(以下、本判決といいます)と不動産鑑定評価についてみていきたいと思います。

重要事項

 被相続人が借入れを利用して、あえてタワマンを購入し、購入資産の評価額を大きく下げ、相続税の節税をすることは一般的に行われていましたが、この節税方法が、本判決の事案にあっては否定されました。そして、本件タワマンの相続税評価では相続税額算出において合理的ではないとし、不動産鑑定士による不動産鑑定評価額が重視されました。

 この判決により、不動産鑑定評価の合理性が確認され、重要性が認識され、不動産鑑定評価への信頼をさらに高めました。

「タワマン節税」を否定した本判決

事例の概要

 被相続人は、平成21年1月30日付けで信託銀行から6億3,000万円の借入れをして、同日付でタワマン:甲マンションを8億3,700万円で購入しました。さらに、平成21年12月21日付で共同相続人らのうち1名から4,700万円を借入れ、同月25日付けで信託銀行から3億7,800万円を借り入れた上、同日付けでタワマン:乙マンションを代金5億5,000万円で購入しました。

被相続人および相続人らは、甲乙マンションの購入およびその購入資金の借入れ(以下、本件購入・借入れといいます)を、被相続人およびその経営していた会社の事業承継の過程の一つと位置付けつつも、本件購入・借入れが近い将来発生することが予想される被相続人からの相続税の負担を減じまたは免れさせるものであることを知り、かつ、これを期待して、あえて企画して実行しました。

本件購入・借入れがなかった場合の相続税評価額と相続税額

評価通達によれば、相続税評価額は以下のとおりです。

資 産相続税評価額鑑定評価額
甲マンション200,040,1474円754,000,000円
乙マンション133,664,767円519,000,000円

 上記の課税価格の合計額は28,261,000円で、基礎控除(基礎控除額は3,000万円+600万円×法定相続人数2人=4,200万円)の結果、相続税額0円です。

不動産鑑定評価の実施

財産評価基本通達6項(総則6項)には、「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の評価は、国税庁長官の指示を受けて評価する」とあり、行き過ぎた節税対策に適用されます。
 そこで、国税庁長官は、札幌国税局長からの上申を受け、平成28年3月10日付けで、同国税局長に対し、本件各不動産の価額につき、財産評価基本通達6項により、評価通達の定める方法によらずにほかの合理的な方法によって評価することを指示しました。 
 札幌南税務署長は、上記の指示により、平成28年4月27日付けで、不動産鑑定士に対し、不動産鑑定士が不動産鑑定評価基準により本件相続の開始時における本件各不動産の正常価格として算定することを依頼しました。鑑定評価額は上記表のとおりです。

 鑑定評価額が相続税評価額よりもかなり大きいのがわかります。

 鑑定評価額に基づいた相続税の課税価格は888,749,000円で、相続税の総額は、240,498,600円です。

判決

本判決の判断は以下のとおりです。 

「(1)相続税法22条は、相続等により取得した財産の価額を当該財産の取得の時における時価によるとするが、ここにいう時価とは当該財産の客観的な交換価値をいうものと解される。そして、評価通達は、上記の意味における時価の評価方法を定めたものであるが、・・・相続税の課税価格に算入される財産の価額は、当該財産の取得の時における客観的な交換価値としての時価を上回らない限り、同条に違反するものではなく、このことは、当該価額が評価通達の定める方法により評価した価額を上回るか否かによって左右されないというべきである。そうであるところ、本件各更正処分に係る課税価格に導入された本件各鑑定評価額は、本件各不動産の客観的な交換価値としての時価であると認められるというのであるから、これが本件各通達評価額を上回るからといって、相続税法22条に違反するものということはできない。 

(2)ア・・・租税法の適用に関し、同様の状況にあるものは同様に取り扱われることを要求するものと解される。そして、評価通達は相続財産の価額の評価の一般的な方法を定めたものであり、課税庁がこれに従って画一的に評価をおこなっていることは公知の事実であるから、課税庁が、特定の者の相続財産の価額についてのみ評価通達の定める方法により評価した価額を上回るものとすることは、たとえ当該価額が客観的な交換価値としての時価を上回らないとしても、合理的な理由がない限り、上記の平等原則に違反するものとして違法というべきである。もっとも、上記に述べたところに照らせば、相続税の課税価格に導入される財産の価額について、評価通達の定める方法による画一的な評価をおこなうことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がる場合には、合理的な理由があると認められるから、当該財産の価額を評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることが上記の平等原則に違反するものではないと解するのが相当である。

イ これを本件各不動産についてみると、本件各通達評価額と本件各鑑定評価額との間には大きなかい離があるということができるものの、このことをもって上記事情があるということはできない。もっとも、本件購入・借入れが行われなければ本件相続に係る課税価格の合計額は6億円を超えるものであったにもかかわらず、これが行われたことにより、本件各不動産の価額を評価通達の定める方法により評価すると、課税価格の合計額は28,261,000円にとどまり、基礎控除の結果、相続税の総額が0円になるというのであるから、上告人らの相続税の負担は著しく軽減されることになるというべきである。そして、被相続人及び上告人らは、本件購入・借入れが近い将来発生することが予想される被相続人からの相続において上告人らの相続税の負担を減じ又は免れさせるものであることを知り、かつ、これを期待して、あえて本件購入・借入れを企画して実行したというのであるから、租税負担の軽減をも意図してこれを行ったものといえる。そうすると、本件各不動産の価額について評価通達の定める方法による画一的な評価をおこなうことは、本件購入・借入れのような行為をせず、又はすることのできない他の納税者と上告人らとの間に看過し難い不均衡を生じさせ、実質的な租税負担の公平に反するというべきであるから、上記事情があるものということができる。」

 評価通達の定める方法による評価に対して、鑑定評価を実施しなければならない法的な理由がこの判断に適正に記載されていますので、判断のほぼ全文を記載しました。

 上記判断からしますと、評価通達の定める方法による評価に対し、相続人等が不動産鑑定評価書を提出しても、「他の納税者・・・との間に看過し難い不均衡を生じさせ、実質的な租税負担の公平に反する」という特別な事情が認められる場合に限り、鑑定評価額が採用されるのであって、そうでない場合は、鑑定評価書を提出したからといって、それが採用されることは通常あり得ないということがいえそうです。

タワマン節税とそれに対する影響

 これまでのタワマンの相続税評価額は、特に上層階のマンションにあっては、時価とはかけ離れた、とても低い評価額でした。それは、マンション一棟(敷地も含む)の評価額を全室の個数で単純に除して、各マンションの評価額を算出していたからです。ですので、タワマンの上層階を購入して相続税の節税対策をする資産家が多くいました。

 本判決後、国税庁は、実勢価格と相続税評価額の乖離を縮小させるため、相次いで通達を改定しました。これにより、タワマン節税はほぼできなくなりました。

 本判決により、タワマン節税がほぼ否定されることになりましたが、その他の節税対策が、行き過ぎた節税対策として、本判決を根拠として否定される可能性があります。その場合、行き過ぎた節税対策とは具体的に何かということが論点になりますが、それは今後明らかになってくるのではないでしょうか。

 本判決では、課税庁がいかに不動産鑑定評価を信頼しており、最後のよりどころとしているかが分かったかと思います。冒頭にも記載しましたが、判決により不動産鑑定の信頼性と重要性が増し、不動産鑑定士の地位がさらに上昇したものと思います。

 なお、本事案では、相続人には2億円以上の追徴課税処分がなされました。

こんな記事も読まれています

コラム一覧へ

まずは課題から最適なサービスを
ご提案します

企業が抱える不動産・動産・経営判断に関する課題を、専門家が最適なサービスに導きます。

Contact

お問い合わせ

不動産鑑定・調査・動産評価に関するご相談は
こちらからお気軽にお問い合わせください。

Contact

お問い合わせ

不動産鑑定・調査・動産評価に関するご相談は
こちらからお気軽にお問い合わせください。