第九話
変わる覚悟、動き出す組織
静かな変化のはじまり
逆風の中で、三友は少しずつ前に進み始めます。劇的な回復ではありません。しかし、確実に変化は起きていました。
2代目社長・吉村のもとで進められたのは、企業としての基盤強化でした。ガバナンス体制の整備、コンプライアンスの徹底、予算管理の高度化――。派手さはなくとも、持続的な成長に不可欠な取り組みが一つひとつ積み重ねられていきました。
こうした改革は、すぐに業績へ表れるものではありません。しかし、環境が変化しても安定して価値を提供し続けるためには、組織そのものを強くすることが欠かせませんでした。目に見えにくい基盤づくりを地道に積み重ねたことが、その後の三友の成長を支える土台となっていきます。
「待ち」から「動く」へ
2018年、3代目社長・堂免が掲げたのは、「オフィスで待たずに、外に出よう」というシンプルなメッセージでした。それまでの「依頼を待つ」姿勢から、自らお客様のもとへ足を運び、課題を見つけ、解決策を提案する企業へと変わろうという意思表示でもありました。慣れない営業活動に戸惑いながらも、社員一人ひとりがお客様と向き合い始めます。ある部門では、三友社員役、顧客役を決めて、ロールプレイング方式で営業のトレーニングを行い、お互いに教え合い、議論して、現場に出ていくという姿も見られました。また、社内システム上では社員それぞれの顧客訪問活動の成果が共有され、同僚の成果や工夫に刺激を受けながら、自らも挑戦しようという機運が生まれていきました。営業は一部の社員だけの仕事ではなく、組織全体で学び合い、支え合う活動へと変わっていったのです。会社が目指す「自立自走型」の人材育成が少しずつ動き出した局面でした。
直接声を聞き、課題を知り、応えていく。その積み重ねの中で「助かった」「頼りになる」というお客様からの言葉が少しずつ増えていきました。それは、単に仕事を受注するための営業ではなく、お客様との信頼関係を築く活動へと変わっていったことを意味していました。


グループ連携が生む力
三友の原点である「顧客ニーズ最重視」は、この時代に新たな形で再起動しました。お客様が抱える課題は以前にも増して複雑化し、一社だけ、一つの商品だけで解決できるものではなくなっていたからです。
同時に、タスや事業性評価研究所といったグループ各社の機能が連携することで、単体では提供できない価値が生まれ始めていました。不動産評価・調査、システム査定、動産評価、事業性評価など、それぞれの専門性を組み合わせることで、お客様に対してより幅広く、より本質的な課題解決を提案できる体制が整いつつありました。創業以来大切にしてきた「つなげる」という考え方は、人と人をつなぐだけでなく、会社と会社、サービスとサービスをつなぐことへと発展し、新たな価値創造へと結び付いていったのです。(第十話へ続く)
