三友ヒストリー

第四話 新たな顧客ニーズ

寄せられた無理難題

顧客ニーズ最重視の戦略が功を奏して三友の不動産鑑定評価書は金融機関を中心に着々とシェアを拡大していきました。この第一弾目の商品投入後、一年も経つと、新たなニーズが金融機関の担当者から寄せられました。それは、「不動産鑑定の料金は高いからもっと安くならないか」というものでした。金融機関が利用しやすいようにと低廉な価格設定を目指していた井上でも、さらなる価格引き下げは諸経費を考えると収支的にもハードルの高い注文でした。

見えてきた真のニーズ

ところが、金融機関の担当者を訪ねて話をよくよく聞いてみると、本当のニーズは料金というよりは商品仕様にあることが分かったのです。不動産鑑定評価書をとるに越したことはないが、近隣不動産の相場情報で事足りるケースや、対象不動産の現況を確認することを主目的とするケースなど、

図4:価格低下でも引き合い増で新たな収益源になる
図4:価格低下でも引き合い増で新たな収益源になる

担保評価には様々な局面があり、必ずしも不動産鑑定士による不動産鑑定評価書が毎回必要となる訳ではないというものでした。不動産鑑定評価書が、不動産鑑定士という専門家の『判断結果』とするなら、その前段階である客観的な事実だけを集めた『判断材料』を提供する商品も求められていると、井上は気づきました。早速、井上は不動産鑑定評価書に続く第二弾目の投入商品の開発に取り掛かります。最新の登記情報や公法規制情報を得るために法務局や役所の調査を行う一方、実際に現地調査を行い、近隣の状況や対象不動産の現況を確認。地元の不動産業者からも相場情報を聴取した上で、これらの調査結果をA4一枚に収めた調査報告書を自らデザインしました。

主婦層も不動産調査員に登用

問題はこの調査の担い手をどう手配するか。当初は提携先の不動産鑑定事務所の補助者(個人事務所において不動産鑑定士の仕事を補助する人)や不動産業者にお願いしましたが、期待したほど集まりませんでした。そこで井上は、不動産知識はないけれども能力と時間のある家庭の主婦を活用することも選択肢に入れて、要員確保を進めました。そして実際に業務をスタートさせてみると、予想に反してこの主婦グループが期待以上の成果を上げ、時間の経過と共に大きく成長。ベテラン調査員としての存在感を増していったのです。

井上はこの不動産調査報告書の料金を1万5千円(当時)に設定し、不動産鑑定評価書との商品的なすみ分けを明確にしました。この商品は調査結果をA4一枚に凝縮したコンパクトなデザインが便利だと評判になり、様々な金融機関からの依頼が舞い込むことになりました。